DJALU・GURRUWIWI

北東アーネムランドに住むジャルー・グルウィウィは、ヨルング族の文化グループに属するGalpu族のリーダーおよび年長者(エルダー)です。また、優れたイダキプレイヤーでありイダキクラフトマンとして世界的に有名です。
 彼の手掛けたイダキをRripangu Yirdakiと言います。RripanguとはGalpu族の言葉で稲妻を表し、稲妻が表わすものすべてを意味します。そして、RripanguはGalpu族の強力なシンボルです。


【Djalu Saying】


日本ディジュリドゥ協会 発行誌
[DID YOU READ & DO?#31] Special Interview より

16th July,2001 Interview to Djalu at Nhulunbuy,
Transrating to english by Sandra Gurruwiwi and Family.
Transrating to Japanese and writing by Eiji Suzuki.
Photo by Kenji Mikami.




◎北東アーネムランドにイダキの生まれ故郷を訪ねた。幾つもの「偶然」、あるいは「必然」に導かれ僕らはGalpu(ガルプ)の地に降り立った。着くやいなや忽然と姿を現わしたその男こそ世界的に有名な伝説のイダキ・マスター、ジャルーであった。
その初老の大男は、いつもシックなアロハシャツを着ている。立派な上半身に似合わずシャツと半ズボンから出た黒い手足は意外なほど華奢で細長い。縮れた黒い髪に白い髭、少し崩壊しかけた大きな鼻の上に濃いサングラスをかけ、普段はそのするどい眼光を隠している。シャイである。サングラスは見る度に違う。おしゃれである。彼は酒もタバコもやらないらしい。
 幾人かのファミリーを引き連れて歩く姿は、ちょうどマウンテンゴリラのボス、シルバーバックを思いおこさせる。そんな風格と茶目っ気を兼ね備えている。

「Yidakiを吹く時はストレートに吹くんだ。そして舌の使い方が重要なんだ。」
 これまた身体に似合わず高い声でそういうと、彼は口三味線ならぬ口ディジュに合わせ、手で舌の動きを真似して見せてくれる。ティプトゥル、ティプトゥル、ティプトゥル〜トゥル〜、…。なにやら分ったような分らないような。「ヤッカ・ウォーリー」(no worry)その男は優しくそう言ってくれる。


 

ジャルー・グルウィウィ(Djalu Gurruwiwi)

ヨス・インディにイダキ(Yidaki)を提供していることでも知られる世界的に有名なイダキ・マスターである。彼の作るイダキは大きくて重い。吹きこなすには相当な力量が要求される。にもかかわらずそのイダキは世界中からオーダーが入り高値で取り引きされる、まさに引っ張りだこの状態だ。彼のイダキは彼独自のフォルムを持ち、誰も真似して作ることはできない。彼の工房では毎日、ファミリーの男たちがイダキ作りに勤しみ、ガジュマルの木陰でシスター達がイダキのペインティングに精を出している。

  


 djalu-photoイダキのドリーミングを聞く

彼は一遍の詩を読むかのように、Galpu族の言葉で静かに語りはじめた。イダキのはじまりの話だ。


 「昔むかし、我らGalpu族を含むたくさんの部族が集まりイダキのコンテストが行われた。コンテストの間、他の部族が吹いている時は何も起らなかったが、Galpuが吹きはじめると、突然西の風(ジュンゲディン)が巻き起った。
 イダキの音は西の風に乗って遠くまで運ばれ、ついにはゴロオロまで届いた。」

ゴロオロはGalpu族の一種のスピリチャル・プレイスだという。

「だからゴロオロとイダキは特別な関係(コモモ)があり、イダキはそこにつながっている。
イダキのパワーが西の風を呼び、大きな入道雲(ウィルパング)が湧き雷を運ぶ。ウィルパングは閃光と雷鳴とともに先祖の魂と智恵、それによる守護をもたらすと、我々ヨルングは信じている。」

雨季の到来である。
 「イダキはここ我々Galpuの地で生まれたのだ。我々には二つのモイエティ(血族)がある。Dhuwa(ドゥワ)とYirritja(イリチャ)だ。ドゥワのイダキは『ジュンガリン』と呼ばれ大きく、イリチャのイダキは『バリンバリン』と呼ばれ小さい。バリンバリンというのは“探し廻る”というような意味だから、イリチャはまだ居場所を探しているってことかな(笑)。」ジャルーのファミリーはもちろんドゥワに属する。




 「イダキはビルマ(クラップスティック)とパワーを共有していて、お互いに分かちがたいものなのだ。ビルマがなくてはイダキのパワーと伝統も失われてしまう。私は父親からイダキを授かった。それ以来いつもイダキと一緒だ。
狩りに行く時でさえ持って行ったほどだ。そうして私はイダキ・マンになった。私の兄弟のアルフレッドはビルマを授かり、ソングマンになった。…またペインティングはファンデーション(土台、基礎、根本)である。
 「イダキは単なる楽器ではなく、何か特別なもの、神聖なものなのだ。
西の風(Barra)を呼び起こしたり、女性が吹くことも禁じられている。」
 木を切りイダキを作ることは誰でもできるが、ジュンガリンの大きなイダキを作るにはジャルーの許可が必要だという。そこには目に見えないフェンスのようなものがあって、誰もフェンスをよじ登って勝手にそこのものを取ることはできない。ジャルーが鍵を持っているのだ。
 
「ジュンガリン(ジャルーのイダキ)にはGalpu族のスピリットが入っていて、それは単なる楽器ではなく、Lifeそのものなのだ。それは吹く者にスピリチュアルなパワーを与えてくれる。また単に吹くのではなくそれは歴史や物語を語ることでもある。それは違う次元に到達すること。それは聞くものの魂に触れる。あるいは一種のヒーリング(癒し)ともいえる。吹くことの意味やそのパワーを理解しないと逆に病気になってしまうこともあるのだ。
 「イダキの話はもっともっといっぱいある。長い歴史がある。そして深い。続きはまたいつかにしよう。」
 

「イダキをはじめとしてGalpu族を含むヨルングの文化は未だに強く生きている。それはファウンデーションであり、世代を越えて伝えられていて、誰にも奪い取ることはできない。」
 アラフラ海からの風が優しく吹いていた。

Eiji Suzuki & Kenji Mikami 


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